nekoatamaの週誌

一週間を振り返る

映画「トイレット」(引用)

荻上直子監督の映画「トイレット」をようやく観てきました。上映館が少ない
上にロードショー公開が8月28日だったので、いつ打切りになるかと気が気では
ありませんでした。

ここで思い出したのは、先日、第9回小林秀雄賞の授賞式で受賞者の加藤陽子
さん(東京大学大学院人文社会系研究科教授)がスピーチで紹介していたエピソ
ードでした。大学で教師をしていると、講義で自分が話すことの何に学生が強く
反応するかがよく分かるけれども、いままで自分がしゃべってきた中で何がいち
ばん受けたか。それは「先生には友達が本当にいないの」と言った瞬間だった、
という話です。ドカンと笑いが来た、というのです。「つまりそれくらい、みん
な、友達がいないということに不安を感じているんですね。私の話を聞いて、あ、
なんだ、友達がいなくてもだいじょうぶなんだ、と安心するみたいです」。「だ
から、友達がいなくてもだいじょうぶ。ひとりでもだいじょうぶ」というのは、
いまの若い人たちに対する大切なメッセージです。しかし同時に、「でもひとり
じゃないよ」と伝えていくのも教師である私の役割です、といった意味のことを
話されていたと思います。

トイレは、まさにひとりの場所。人知れず泣きたい人の多くが選ぶ場所ですし、
「友達がいない」ことに悩む日本の若者には「トイレ飯」が増えているというご
時世です。でも、文脈が変わればウォシュレットの空間は、「快適な、いい感じ
の場所」にもなり得ます。エンド・ロールに「SPECIAL THANKS」として「TOTO
の名前が出たときには、客席に笑いが起きました。日ごろから、この空間への感
謝を共有している人たちからの賛同の笑いだったように聞こえました。
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「考える人」編集長 河野通和(こうのみちかず)